不動産投資によるサラリーマンの節税効果!
シミュレーション結果は?

不動産投資の第一の目的は、「賃貸事業を行い、長期的に安定した収益を得る」ことです。一方で、節税を目的に不動産投資を始めるサラリーマンも少なくありません。

そこでこの記事では、不動産投資によって節税ができる仕組み、実際にどれほどの効果が見込めるのかを説明します。節税目的で不動産投資を始める際のポイントや注意点も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

【関連記事】不動産投資で節税できる仕組みとは!?

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    サラリーマンが不動産投資を始めた場合の節税シミュレーション

    はじめに、不動産投資による節税効果の仕組みを確認しておきましょう。家賃収入80万円、支出60万円、減価償却費50万円とします。減価償却費は経費に計上できるので、帳簿上の収支は30万円の赤字(80万円-(60万円+50万円))になります。この30万円の赤字を給与所得と損益通算することで課税所得が低くなります。

    2020年(令和2年)の年収が2,000万円の人について、具体的な節税金額を計算してみます。計算を単純にするため、基礎控除以外は考慮しません。

    不動産投資をしていない場合の所得税・復興特別税は次のようになります。

    ①給与収入 2,000万円
    ②給与所得控除 195万円
    ③給与所得金額(①-②) 1,805万円
    ④基礎控除 38万円
    ■課税所得(③-④) 1,767万円
    所得税・復興特別税 約439万円

    次に不動産投資をした場合の所得税・復興特別税を計算します。

    ①給与収入 2,000万円
    ②給与所得控除 195万円
    ③給与所得金額(①-②) 1,805万円
    ④基礎控除 38万円
    ⑤不動産所得 -30万円
    ■課税所得(③-(④+⑤)) 1,737万円
    所得税・復興特別税 約428万円

    不動産投資をした場合の節税額は約11万円になります。

    ※概算シミュレーションのため実際の計算結果とは異なる場合があります

    不動産投資で課税される税金の種類は?

    前の項目では、不動産投資による節税効果を説明しました。一方で、不動産投資を行うことで発生する税金についても考えておく必要があります。不動産投資に関わる税金は、不動産を取得・保有するためにかかる税金と収益にかかる税金の2つに大別できます。

    不動産投資を始めると課税される税金

    不動産を取得したときには「不動産取得税」のほか、登記をするための「登録免許税」がかかります。不動産取得税は土地・建物それぞれにかかり、課税標準額の4%が課税されます(2024年3月31日までは軽減特例により土地については3%)。課税標準額はあとで説明する固定資産税と同じです。

    登記とは権利関係を対外的に示すための制度です。不動産投資では、購入した物件を登記するほか、ローンを利用した場合には金融機関が抵当権設定登記を行います。

    登記の種類課税標準税率
    土地所有権移転登記固定資産税評価額1.5%
    建物(新築)所有権保存登記固定資産税評価額0.4%
    建物(中古)所有権移転登記固定資産税評価額2.0%
    ローン抵当権設定登記ローンの借入金額0.4%
    ※土地の所有権移転登記の税率は2024年3月31日まで軽減措置(本則2.0%)

    不動産の保有にかかる税金には、「固定資産税」と「都市計画税」があります。固定資産税は、課税標準額に税率(一般に1.4%)をかけて計算します。都市計画税は、市街化区域内に所在する土地と建物が対象で、固定資産税の課税標準額に対して上限0.3%で課税されます。

    固定資産税の課税標準額は、土地・建物それぞれの固定資産税評価額から算出されます。土地の固定資産税評価額は、固定資産税路線価(1㎡当たりの評価額)に土地面積をかけて算出します。固定資産税評価額に、住宅用地に対する特例措置や負担調整措置などを行い課税標準額が決まります。

    建物については特殊なケースを除き、固定資産税評価額がそのまま課税標準額になります。建物の固定資産税評価額の計算は複雑なため、購入価格の70%とする方法が一般的に使われています。

    なお、固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日時点の所有者に対して課税されます。このため通常は、不動産を取得する際にその年の固定資産税・都市計画税の税額を日割計算して、売り主に清算金として支払います。

    不動産投資で収益を得て課税される税金

    不動産を賃貸して得る家賃収入から経費を引いたものが「不動産所得」で、所得税、住民税などが課税されます。経費に該当するのは、管理費、修繕費、修繕積立金、減価償却費、税金、ローンの利子、損害保険料などです。

    所得税や住民税は、すべての所得の合計に対して課税する「総合課税」が原則です。サラリーマンが不動産投資を行った場合は、勤務先からの「給与所得」と「不動産所得」を合計して、以下の算式により税金を計算します。

    所得税=課税所得金額(給与所得+不動産所得-所得控除額)×税率-控除額
    住民税=均等割額(都道府県民税1,500円+市区町村民税3,500円)+所得割額(課税所得×10%)

    所得税は累進課税のため、所得が上がると税率が高くなります(控除額も大きくなります)。

    このほか、以下に挙げるケースなどに該当すると、消費税、事業税が発生します。

    【消費税】

    【事業税】


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      不動産投資で節税する5つの方法

      不動産投資で節税をするにはさまざまな方法があります。ここでは、主な方法を5つ紹介します。事前の届け出や準備期間が必要なものもありますから、自分の状況を把握したうえで、早めに対応することをおすすめします。

      【関連記事】不動産投資でできる税金対策とは?3つの節税をどこよりも詳しく解説!

      損益通算を利用する

      不動産投資を始めた年には、不動産取得税や登録免許税など購入のための諸費用が発生するため、不動産所得が赤字なることが少なくありません。また、空室の発生による家賃収入減や自然災害による修繕費増などによって、赤字になってしまうこともあります。

      前の項目で説明したように、所得税・住民税は給与所得と不動産所得の合計に対して総合課税されます。したがって、不動産所得で赤字が発生した場合、その赤字を給与所得から差し引いた金額が、全体としての「所得」になります。これが損益通算で、課税対象となる所得が少なくなることによって所得税などを節税できます。

      経費計上を利用する

      不動産投資で利益を上げるために使った費用は、経費として所得計算をする際に収入から差し引くことができます。不動産投資における主な経費は、以下に挙げるようなものです。

      このほかにも、経費として認められる費用があります。例えば、不動産会社の訪問や物件の下見、所有物件のチェックのために使う交通費や宿泊費は、旅費交通費として経費計上できます。また、情報収集や勉強のための新聞代や書籍購入費、セミナー参加料、通信費、会食費なども経費になる場合があります。

      減価償却費を利用する

      建物や設備については、年が経つごとに価値が下がっていくものとして、減った分の価値を毎年、経費として計上できます。これを減価償却と言います。減価償却費は、帳簿に計上するだけで実際に支出が発生するわけではありません。したがって、キャッシュフローに影響を与えることなく、所得を圧縮できるわけです。

      減価償却費を計上できる年数には限りがあり、建物の構造や設備ごとに法律で定められた法定耐用年数が基準になります。主な建物・設備の耐用年数は以下のとおりです。

      青色申告の特別控除を利用する

      確定申告には、白色申告と青色申告の2つの方法があります。違いを簡単に言えば、「簡便に作成できるものの特段のメリットはない白色申告」と「作成するのは大変なもののメリットの多い青色申告」となります。なお、青色申告を利用するためには、税務署に対して事前に青色申告申請書の届け出をする必要があります。

      青色申告をする第一のメリットは、「青色申告特別控除」を受けられることです。所得金額から最大65万円が控除されるため、課税所得が低くなり所得税や住民税を抑えられます。65万円の青色申告特別控除を受けるための要件は、次のようになっています。

      ①所得の種類が不動産所得または事業所得であること
      ②不動産所得については、不動産貸付が事業として行われていると認められること
      ③複式簿記により記帳していること
      ④帳簿付けが現金主義でないこと
      ⑤申告時に基づいて作成した貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付し、控除の適用を受ける金額を記載すること
      ⑥仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること
      ⑦所得税の確定申告書、貸借対照表および損益計算書などを、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して提出すること

      なお、①~⑤までの要件に該当する場合は55万円、いずれの要件にも該当しない場合は10万円の青色申告特別控除が受けられます。

      法人化する

      個人の所得に課される所得税は累進課税のため、所得が上がるに従って税率が高くなります。所得金額ごとの所得税率は、330万円~694万9,000円が20%、695万円~899万9,000円が23%、900万円~1,799万9,000円が33%です。これに対して、法人に課される法人税の税率は原則、規模に応じて一律で資本金1億円以下の法人などの場合は23.20%です。

      所得が900万円を超えると法人税率のほうが低くなるので、個人事業のままで所得税を支払うよりも、法人を設立して事業を行うほうが税金を低く抑えることができます。不動産所得がある程度の規模以上になった場合には、法人化を検討してみるのもひとつの方法です。

      ただし、法人の所得に対しては、法人税のほか、法人住民税、地方法人税、法人事業税という3つの税金が課されます。これらを合計した税金の実質的な負担割合を実効税率と言います。法人化による得失は、実効税率なども含めて判断する必要があります。税理士や公認会計士などの専門家に相談してみるのがいいでしょう。

      相続税対策としても不動産投資を活用できる!

      不動産投資は、所得税や住民税の節税だけではなく、相続税対策としても使えます。現金はその金額で相続税が評価されますが、不動産は相続税評価額が取引価格よりも低くなります。それは、土地については地価公示の80%前後とされる相続税路線価、建物については固定資産税評価額に基づいて評価されるからです。

      相続税は、相続財産の評価額から基礎控除を引いたものに相続税率をかけて計算されますから、評価額が低くなるほど節税になるわけです。

      節税目的で不動産投資を始める場合の注意点

      節税効果にばかり気を取られていると、不動産投資の本来の目的を見失ってしまったり、行動が制約されリスクに対応できなくなったりすることがあります。ここでは、節税目的で不動産投資を始める場合の具体的な注意点を説明しますので、よく確認しておくことをおすすめします。

      本来の目的を見失ってしまう

      不動産投資の本来の目的は、長期的に安定した家賃収入により収益を上げることです。一方、損益通算を利用した節税は、不動産投資が赤字でなければ成立しません。一時的にはメリットをもたらすとしても、節税を目的として恒常的に不動産所得を赤字にするのは、キャッシュフローや金融機関の評価に悪影響を及ぼす可能性が高いでしょう。

      節税はあくまで、家賃収入減や突発的な支出増によって不動産投資が赤字になった際のマイナスを少しでも埋め合わせる副次的な効果と考えるべきです。

      不動産投資のリスクに対応できない

      物件購入に利用したローンが変動金利の場合、金利が上昇すると毎月の返済額が増えます。節税を優先して、あまりキャッシュフローを重視しない事業計画になっていると、返済額の増加に対応できず、資金ショートを招く可能性があります。

      ローン返済に支障をきたし、不動産を処分するような事態に陥っては本末転倒です。環境の変化を想定して、不測の事態にも対応できる余裕を持った資金計画を立てておくことが大切です。

      法定耐用年数は終了する

      建物・設備の減価償却費を経費計上できるのは、法定耐用年数までです。設備については更新することで再度、減価償却費を経費計上できますが、建物が法定耐用年数を超えた場合は、節税効果がかなり小さくなります。

      また、建物が法定耐用年数を超えると、売却時の価格が安くなる可能性も高くなります。出口戦略としての売却も視野に入れているならば、収支シミュレーションなどに基づき売却のタイミングの目安を立てておくことをおすすめします。

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      まとめ

      不動産投資を利用した節税効果に魅力を感じる方は少なくないでしょう。ただし、不動産投資の本来の目的は、長期的に安定した賃貸収益を上げることです。節税にばかり気を取られ、不動産事業の赤字を続けるようでは本末転倒です。

      不動産投資で安定した収益確保しつつ、効果的な節税対策も行うのは簡単ではありません。お客様の目的や状況に合わせて、的確にサポートいたしますので、まずは実績・経験ともに豊富なトーシンパートナーズにご相談ください。