- 不動産投資の基礎知識
日本政策金融公庫を不動産投資で利用する3つの条件|適している人の特徴も解説

不動産投資を始める際に欠かせないのが「資金調達」です。民間金融機関で融資を受ける方が多いですが、日本政策金融公庫を選択肢の1つとして検討している方もいるのではないでしょうか。
政府系金融機関である日本政策金融公庫は、民間金融機関とは異なる特徴を持っており、条件を満たせば低金利での融資が可能です。しかし不動産投資で利用するには、不動産賃貸業として事業を行う必要があるなどいくつかの条件があり、すべての投資家に適しているわけではありません。
本記事では、日本政策金融公庫から不動産投資用の融資を受けるための具体的な条件や、どのような人に適しているのかを詳しく解説します。不動産投資を検討している方や日本政策金融公庫について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
日本政策金融公庫とは事業者向けの資金融資を行う金融機関

日本政策金融公庫は、政府が100%出資している政府系金融機関として、2008年に国民生活金融公庫・農林漁業金融公庫・中小企業金融公庫の3機関の統合により誕生しました。国民生活の向上と地域経済の活性化が目的であり、中小企業や小規模事業者への融資を積極的に行っています。
民間金融機関では対応が困難な、創業期の事業者への支援が手厚いのも、日本政策金融公庫の特徴です。なお政府系金融機関という性質上、個人の利益追求を目的とした一般的な不動産投資には融資を行っていません。しかし、住環境の整備や地域活性化に貢献する不動産賃貸事業については、融資対象となっています。
金利面では民間金融機関と比較して低い傾向にあり、不動産のような担保がある場合、2025年6月時点で1〜3%ほどの低金利で借り入れできます(※)。また、保証人や団体信用生命保険への加入が不要である点も大きな魅力です。一方で、これらの保証を付ける場合は、金利の上乗せが必要になります。
創業間もない場合や民間金融機関からの融資を受けにくい事業者にとって、日本政策金融公庫は貴重な資金調達先といえるでしょう。
(※)参考:日本政策金融公庫|国民生活事業(主要利率一覧表)
日本政策金融公庫から不動産投資用の融資を受ける3つの条件

日本政策金融公庫は政府系金融機関として、民間金融機関とは異なる独自の融資基準を設けています。一般的な不動産投資ローンとは審査のポイントや必要な条件が異なるため、事前にしっかりと理解しておくことが重要です。融資を受ける際には、以下の3つの条件が必要です。
- 不動産賃貸業として事業を行うこと
- 購入予定の不動産を担保にすること
- 税金の延滞・未納がないこと
それぞれ詳しく解説します。
不動産賃貸業として事業を行うこと
日本政策金融公庫の融資目的は、地域経済の活性化や中小企業の支援であり、個人資産の増加を目指す一般的な不動産投資とは根本的に異なります。そのため「不動産投資」という名目での融資は行っておらず、対象となるのは「不動産賃貸事業」としての事業資金融資のみです。
実際に、日本政策金融公庫の「企業活力強化資金」の説明ページにも、法律で定められた特定の組織や、中心市街地の活性化に正式に取り組む認定事業者のみが利用できると明記されています(※)。
(※)参考:日本政策金融公庫|企業活力強化資金
購入予定の不動産を担保にすること
日本政策金融公庫から不動産賃貸事業で融資を受ける場合、無担保での借り入れも可能ですが、融資限度額が2,000万円までに制限されます。また、担保の有無によって適用金利も異なるため、基本的には購入予定の不動産を担保に設定するのがおすすめです。担保を設定することで融資限度額の上限が引き上げられ、より多くの資金を調達しやすくなります。
税金の延滞・未納がないこと
申込者の信用情報は、融資審査における重要な判断材料です。日本政策金融公庫は公的な性格を持つ金融機関であるため、税金や公共料金の延滞や未納がある場合には、基本的に融資承認が下りません。
ただし過去に延滞や未納があった場合でも、その後きちんと納税していることで、返済能力に問題がないと判断される可能性があります。過去の事情よりも、現在の支払い状況や改善への取り組みが重視される傾向にあります。
なお、税金や公共料金の支払いだけでなく、クレジットカードの延滞やローンの滞納の有無も審査に影響する可能性があります。そのため、必要に応じて信用情報機関での照会を行い、自身の信用状況を事前に確認しておきましょう。
不動産投資で日本政策金融公庫から融資を受ける際の注意点

日本政策金融公庫からの融資は魅力的なメリットがある一方で、民間金融機関とは異なる特徴があり、事前に把握しておくべき注意点もあります。具体的な注意点として、以下の2つがあげられます。
- 一般的な金融機関より融資期間が短くなる
- 事業(創業)計画書の内容によっては審査に落ちる
それぞれ詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
一般的な金融機関より融資期間が短くなる
日本政策金融公庫の融資における注意点の1つが、返済期間が最長でも20年に設定されていることです。一般的な民間金融機関では、不動産投資ローンの返済期間を30年以上に設定できるケースが多いため、日本政策金融公庫の場合は月々の返済負担が重くなる傾向にあります。
そのため「毎月の返済金額が許容範囲内に収まるか」「自己資金を十分に用意できるか」を慎重に検討する必要があります。返済負担が重すぎる場合は、本当に日本政策金融公庫での融資が最適な選択なのかを、不動産投資会社などの専門家に相談するようにしましょう。不動産投資会社の無料相談を活用することで、融資戦略を含む総合的なアドバイスを得ることが可能です。
関連記事:不動産投資のローンを組むならどの銀行がおすすめ? 審査で重視されるポイントもご紹介
事業(創業)計画書の内容によっては審査に落ちる
日本政策金融公庫から融資を受けるためには、詳細な事業計画書の作成と提出が必須となります。事業計画書には、以下のような内容を詳細に記載する必要があります。
- 創業に至った経緯
- 具体的な事業内容
- 今後の収支見通し など
特に重要なのは、事業を始める明確な動機と具体的な目標設定です。事業の立ち上げ理由や将来的な目標、その達成に向けた具体的なアクションプランなどが論理的かつ現実的にまとめられているかが、審査のポイントとなります。
事業計画書の内容が不十分であったり、記載内容に矛盾が生じていたりすると、事業の実現可能性に疑問を持たれてしまいます。その結果、審査に落ちる可能性が高まるため、事前の十分な準備が必要です。不動産投資会社のように、融資審査に慣れている専門家のアドバイスを受けながら、説得力のある事業計画書を作成することが重要です。
不動産投資で日本政策金融公庫から融資を受けるのに適している人

日本政策金融公庫は、すべての投資家に適しているわけではありません。独自の融資条件や優遇制度があるため、その特徴を活かせる人とそうでない人に分かれます。特に以下3つの条件に該当する方は、日本政策金融公庫の制度を有効活用できるでしょう。
- 融資希望額が7,200万円以下の人
- 「女性」「35歳未満」「55歳以上」の人
- 利回りの高い物件を取得予定の人
それぞれ詳しく解説します。
融資希望額が7,200万円以下の人
日本政策金融公庫での融資限度額は、資金調達の目的によって異なりますが、最高でも7,200万円となっています。この上限額があることで、大規模な不動産投資には適さない場合があります。
アパートやマンションの新築には、億単位の初期費用が必要になることも珍しくありません。そのため、初期費用の大部分を融資で賄おうと考えている場合、日本政策金融公庫の融資限度額ではカバーしきれない可能性があります。
一方で、比較的価格の低い中古物件やワンルームマンションのような小規模な投資物件を購入する場合、または十分な自己資金を用意できる方であれば、融資限度額内で十分に対応可能です。
「女性」「35歳未満」「55歳以上」の人
日本政策金融公庫では、以下の属性に該当する方に対して金利の優遇措置が用意されています。
- 女性
- 35歳未満
- 55歳以上
この優遇制度は、多様な事業者の創業や事業拡大を支援するという日本政策金融公庫の方針に基づいています。これらの属性に該当する方で不動産投資を検討している場合には、日本政策金融公庫への融資申請を積極的に進める価値があるでしょう。
利回りの高い物件を取得予定の人
日本政策金融公庫では、融資の返済期間が他の金融機関と比較して短いため、高利回りの物件を狙うことが特に重要です。返済期間が短いということは、月々の返済負担が重くなることを意味します。
もし利回りが低い物件に投資した場合、家賃収入だけでは融資の返済をカバーできず、毎月持ち出しが発生するリスクが高まります。高い利回りの投資物件を選択することで、短い返済期間であっても家賃収入から融資返済を賄える可能性が高まり、キャッシュフローの安定性を確保することが可能です。
不動産投資で日本政策金融公庫から融資を受ける際の流れ

日本政策金融公庫から融資を受けるには、民間金融機関とは異なる独自の手続きを踏む必要があります。事前に全体の流れを把握しておくことで、必要な準備を計画的に進められます。融資実行までの手続きは、以下のとおりです。
- 事業計画書の作成
- 最寄り支店への相談
- 必要書類の準備
- 担当者と融資審査の面談
- 金銭消費賃借契約の締結と融資実行
各ステップを詳しく解説します。
STEP1:事業計画書の作成
日本政策金融公庫を利用する場合は不動産賃貸事業として申し込む必要があり、詳細な事業計画書の作成が必須となります。事業計画書には、以下のような情報を記載する必要があります。
- 事業の概要
- 市場分析
- 競合分析
- 詳細な収支計画
- 資金計画 など
特に、収支シミュレーションは審査の重要な判断材料です。基本的にはこの段階で、購入予定の物件を決定しておくことが求められます。物件の詳細情報に基づいた具体的な事業計画を作成することで、審査担当者に事業の実現可能性を示せます。不動産賃貸業の収支シミュレーションは専門的な知識が必要となるため、不動産投資会社などの専門家に相談しましょう。
STEP2:最寄り支店への相談
事業計画書の素案が完成したら、日本政策金融公庫の公式サイトで最寄りの支店を確認して相談の予約を取ります。相談は来店での対面相談のほか、オンラインでの相談も可能です。初回相談時には、作成した事業計画書の素案や事業アイデアを持参し、担当者との詳細な話し合いを行います。
この初回相談で、融資の可能性について大まかな判断を受け、必要書類や手続きの流れについて具体的なアドバイスを得られます。担当者とのコミュニケーションを通じて、融資に向けた準備を効率的に進めることが可能です。
(※)参考:日本政策金融公庫|予約相談(お借入またはご返済に関するご相談)【国民生活事業】
STEP3:必要書類の準備
融資相談を終えて正式な申し込みを決定したら、融資手続きに必要となる各種書類の準備を行います。融資申し込みに必要な書類は、以下のように多岐にわたります。
- 事業計画書(創業計画書)
- 物件の建築図面や物件概要書
- 土地の登記簿謄本
- 固定資産税評価証明
- 源泉徴収票、確定申告書の写し(最低過去2〜3年分)
- 公共料金や税金の支払い状況がわかる領収書や証明書
- 印鑑登録証明書と実印
- 住民票や身分証明書
書類の不備や不足があると審査が遅れる原因となるため、事前に必要書類を確認し、余裕を持って準備することが大切です。
STEP4:担当者と融資審査の面談
必要書類を提出した後、担当者との融資審査面談が実施されます。この面談では、事業計画の詳細や資金使途について、詳しい質問を受けることになります。また審査で重視されるのは、以下のようなポイントです。
- 事業の実現可能性
- 収益性
- 資金計画の妥当性
- 申込者の返済能力 など
事業計画書に記載した内容について、具体的で説得力のある説明ができるよう準備しておくことが重要です。面談終了後、提出書類と面談内容を総合的に判断して融資審査が行われます。審査期間は通常2週間程度とされていますが、融資条件や案件の複雑さによっては、それ以上の期間を要する場合もあります。
STEP5:金銭消費貸借契約の締結と融資実行
融資の承認が決定すると、融資決定通知書が送付されます。この通知を受け取ったら、正式な契約手続きに進み、主に金銭消費貸借契約と抵当権設定契約の2種類を締結します。
契約書の内容を十分に確認し、不明な点があれば担当者に質問しましょう。すべての契約手続きが完了した後、指定した金融機関口座に借入金が振り込まれ、融資が実行されます。この時点で、不動産購入の手続きを進めることが可能になります。
融資先で迷ったら不動産投資会社に相談するのがおすすめ

日本政策金融公庫と民間金融機関のどちらが自身の投資戦略に適しているかを判断するには、豊富な経験と専門知識が必要です。
個人で融資先を比較検討するよりも、物件選びから融資まで一貫してサポートしてくれる不動産投資会社に相談することをおすすめします。専門家のアドバイスにより、個人の状況に適した融資戦略を構築できます。特に不動産投資の初心者の場合、融資条件の比較でつまずくケースが多く見られます。
これらの課題を専門家のサポートにより解決することで、融資だけではなく不動産投資全体の成功を実現しやすくなるでしょう。トーシンパートナーズでは、融資相談を含む不動産投資の無料個別相談を実施しており、経験豊富な不動産投資の専門家が、融資に関する悩みも含めて総合的にサポートしています。
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「今」やるべき資産運用とは?

誰にでもできることから始めることは大切ですが、
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まとめ

日本政策金融公庫を不動産投資で利用するには、不動産賃貸業として事業を行うことや購入予定物件の担保設定、税金の延滞・未納がないなどの条件を満たす必要があります。融資期間が短く、月々の返済負担が重くなるため、融資を受けるのに適している人が限られています。日本政策金融公庫と民間金融機関のどちらが適しているかの判断は、専門的な知識を要するため、不動産投資会社へ相談し最適な融資を実現できるようにしましょう。