市街化区域とは街づくりを推進しているエリア|不動産投資におけるメリット・デメリットも解説

不動産投資を検討する際に知っておきたいのが「市街化区域」という都市計画上の区分です。市街化区域は、行政が優先的に街づくりを進めるエリアであり、インフラ整備や生活環境が整っているのが特徴です。本記事では、市街化区域の定義や市街化調整区域との違い、投資におけるメリット・デメリットをわかりやすく解説します。

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    市街化区域とは?市街化調整区域・非線引き区域との違いも解説

    市街化区域について正しく理解するため、まずは法律上の定義を解説します。また、混同しやすい市街化調整区域や非線引き区域との違いを押さえることで、不動産投資における判断基準がより明確になるでしょう。

    市街化区域の定義

    市街化区域は、都市計画法第7条で「すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」と明確に定義されています。この定義からわかるとおり、市街化区域には現在すでに街として機能している場所だけでなく、将来的に発展させる計画がある土地を含むのが特徴です。

    また、この区域は都道府県や市町村が都市計画の一環として定めるもので、指定された範囲内では原則として建築の自由度が高く保たれています。そのため、住宅やマンション、商業施設などを比較的自由に建てられる環境が整っています。

    不動産投資の観点から見ると、市街化区域の定義は非常に重要です。行政が「この地域を街として発展させる」と明言している場所であるため、長期的な資産価値の維持が期待でき、入居者需要も安定しやすいです。

    また、金融機関からの融資を受ける際にも、市街化区域の物件は担保価値が高く評価される傾向にあります。そのため、投資家にとっても安心して資金を投じやすい制度的な後ろ盾があると言えます。

    市街化調整区域・非線引き区域との違い

    市街化調整区域は、市街化区域とは反対に「市街化を抑制すべき区域」と都市計画法で定められています。主な目的は農地や森林などの自然環境を守ることであり、新たな建築行為には原則として大きな制限がかかります。道路や上下水道といったインフラ整備も最小限にとどまり、生活環境としては不便な場合が多いです。

    一方で非線引き区域とは、市街化区域と市街化調整区域の区分そのものが設けられていない地域のことです。人口規模の小さい地方都市で多く見られ、用途地域が指定されていないケースもあります。そのため、建築に関するルールも比較的緩やかです。

    不動産投資の観点では、市街化調整区域の物件は基本的に避けるべきです。建築制限により将来の買い手が限られ、融資も受けにくいため「売却時に価格が下がる」「買い手が見つからない」といったリスクが高まります。その点で市街化区域は、以下のように投資に必要な条件がバランスよく揃っています。

    • 建築の自由度
    • インフラ整備の充実度
    • 資産価値の安定性
    • 売買時の流動性 など

    物件選びでは、まず「市街化区域であるか」を確認することが、投資成功への第一歩です。

    市街化区域を調べる方法

    市街化区域かどうかを確認する主な方法は、以下のとおりです。

    • 不動産情報サイトで手軽にチェックする方法
    • 自治体の都市計画マップで確実に確認する方法

    それぞれ詳しく解説するので、物件を探す際にお役立てください。

    不動産情報サイトで確認する

    SUUMOやHOME’S、at homeなどの主要な不動産情報サイトでは、物件詳細ページに都市計画に関する情報が掲載されています。例えば「都市計画」「地目」「区域区分」などの欄に「市街化区域」や「市街化調整区域」と記載されているケースが多いです。

    ただし、すべての物件に都市計画に関する情報が載っているとは限りません。見つからない場合は、不動産会社へ直接問い合わせるのが確実です。また不動産情報サイトは手軽で便利ですが、情報の正確さを確かめるためにも、自治体が公表している都市計画マップとの併用をおすすめします。

    自治体が公表している都市計画マップで確認する

    市街化区域を確実に確認する方法は、都道府県や市区町村が公開している「都市計画図(都市計画マップ)」を活用することです。多くの自治体では公式サイト上で「都市計画情報」を公開しており、住所や地番を入力するだけで、対象エリアの市街化区域や市街化調整区域が色分け表示され、簡単に確認できます。

    例えば市街化区域は赤やピンク、市街化調整区域は緑や黄色など、色分けで視覚的に表示されるため、一目で違いがわかります。また、都市計画マップでは用途地域の情報も同時に確認でき、投資判断に必要なデータを一度に取得できる点が大きなメリットです。インターネット環境がない場合には、都市計画課の窓口で直接閲覧したり電話で問い合わせたりもできます。

    市街化区域内の用途地域の種類を3つの区分で紹介

    市街化区域内では、土地の使い方を明確にするために、必ず「用途地域」が指定されています。用途地域とは、建てられる建物の種類や規模を定める都市計画上のルールで、全部で13種類に分類されています。ここでは「住居系(8種類)」「商業系(2種類)」「工業系(3種類)」の3つに分けて解説しますので、ぜひ読み進めてみてください。

    住居系用途地域

    住居系用途地域には以下の8種類があり、住環境の保護レベルによって細かく分類されています。

    用途地域主な特徴建築可能な建物
    第一種低層住居専用地域低層住宅の良好な環境保護を目的とした地域住宅、小中学校、診療所など
    第二種低層住居専用地域主に低層住宅が中心の地域で小規模店舗も可第一種低層住居専用地域に建てられる建物のほか、床面積150㎡以下の店舗など
    第一種中高層住居専用地域中高層住宅の良好な環境保護を目的とした地域住宅、病院、大学、500㎡以下の店舗など
    第二種中高層住居専用地域主に中高層住宅のための地域で利便性が第一種中高層住居専用地域よりも高い第一種中高層住居専用地域に建てられる建物のほか、床面積1500㎡以下の店舗や事務所など
    第一種住居地域住居環境保護と利便性の両立が目的の地域住宅、3,000㎡以下の店舗・ホテルなど
    第二種住居地域主に住居環境保護と利便性の両立が目的の地域住宅、店舗、ホテル、パチンコ店など
    田園住居地域農業と調和した低層住宅の建築を目的とした地域住宅、農産物直売所など
    準住居地域道路沿道の居住環境と生活利便性の両立を目的とした地域住宅、店舗、小規模工場、車庫など

    第一種低層住居専用地域は、最も建築ルールが厳しく設定されており、戸建て住宅を中心とした閑静な住宅街を維持するために設けられています。第二種低層住居専用地域は、第一種よりもやや規制が緩やかで、小規模なコンビニや飲食店などの店舗も建築可能です。

    第一種・第二種中高層住居専用地域では、中高層マンションが建築できるため、投資用の賃貸マンションも数多く見られます。第一種・第二種住居地域、準住居地域へと進むほど商業施設の建築がしやすくなり、生活の利便性が向上します。

    商業系用途地域

    商業系用途地域は、以下のように近隣商業地域と商業地域の2種類に分類されています。

    用途地域主な特徴建築可能な建物
    近隣商業地域近隣住民の日常的な買い物を行える地域住宅、店舗、小規模工場など
    商業地域商業の利便増進を図る地域ほぼすべての建物が建築可能

    近隣商業地域は、住宅地に近接した日常的な買い物エリアとして位置づけられており、スーパーマーケットや飲食店、ドラッグストアなどが集まる場所です。商業地域は駅前や繁華街など、より大規模な商業施設が集積する地域で、デパートやオフィスビル、ホテルなどが建ち並びます。

    工業系用途地域

    工業系用途地域は、以下のように3種類に分けられます。

    用途地域主な特徴建築可能な建物
    準工業地域軽工業と住宅が共存可能な地域住宅、工場、危険性の低い工場
    工業地域工場の利便増進を図る地域工場中心、住宅・店舗も可
    工業専用地域工業の利便増進を図る地域工場のみ、住宅建築不可

    準工業地域は住宅の建築も認められており、軽工業の工場と住宅が混在するエリアとなります。工業地域は工場を中心とした地域で住環境としては劣りますが、法律上は住宅の建築が可能です。工業専用地域は、日本の用途地域のなかで唯一住宅の建築が一切禁止されている地域で、工場のためだけの区域となります。

    市街化区域で不動産投資を行う3つのメリット

    市街化区域での不動産投資には、以下のようなメリットがあります。

    • インフラ整備が充実している
    • 資産価値が下がりにくい
    • 賃貸需要が安定しやすい

    それぞれ詳しく解説します。

    インフラ整備が充実している

    市街化区域では、行政が優先的に道路や上下水道、電気などの生活インフラ整備を進めています。そのため、入居者にとって快適で暮らしやすい環境が整いやすいのが特徴です。公共交通機関のアクセスも良好で、バス路線が充実していたり、最寄り駅までの距離が近かったりするケースも多いです。

    さらに学校や商業施設、公園などの公共施設も計画的に配置されており、日常生活に必要な機能が周辺に充実しています。インフラが整備されたエリアは、入居者からの評価も高く、長期的な居住ニーズを生み出しやすいのが特徴です。こうした利便性の高さが、安定した賃貸経営を実現する大きな強みとなります。

    資産価値が下がりにくい

    市街化区域は人口が集中するエリアで、継続的な住宅需要が見込まれるため、土地や建物の資産価値が下がりにくい傾向があります。また、行政による都市開発や再開発の対象になりやすいため、周辺環境が整備・改善され、資産価値が安定しやすい点も魅力です。

    例えば、新しい商業施設の誘致や公園の整備、道路の拡幅工事などが進むことで、地域全体の魅力が一層高まります。金融機関からの担保評価でも、市街化区域の物件は高く見られる傾向があります。長期的に安定した資産形成を目指すなら、市街化区域の物件を選ぶのが賢明な選択と言えるでしょう。

    賃貸需要が安定しやすい

    市街化区域には企業のオフィスや工場、学校などの教育機関が集まっており、単身者からファミリー層まで幅広い層からの賃貸需要があります。通勤や通学の利便性に加え、スーパーや病院など生活に欠かせない施設もそろっているため、入居希望者が途切れにくい点も大きな特徴です。

    そのため、空室が発生しても次の入居者が見つかるまでの期間が短く、家賃収入を安定的に維持できるエリアと言えます。収益の安定性という点では、市街化区域は市街化調整区域や非線引き区域と比べても圧倒的に有利です。特に投資初心者は、市街化区域のような安定需要を持つエリアを選ぶことで、空室リスクを抑えながら安心して運用を続けられるでしょう。

    市街化区域で不動産投資を行うデメリット

    市街化区域は利便性が高く、投資エリアとして人気がありますが、一方で注意しておきたい点もあります。特に税負担や建築規制の面では、思わぬコストや制約につながるケースも多いです。ここでは、市街化区域で不動産投資を行う際に知っておきたい代表的なデメリットを紹介します。

    税金が高くなりやすい

    市街化区域内の物件を所有すると、固定資産税に加えて「都市計画税(税率最大0.3%)」が課されます。都市計画税は、市街化区域内の土地や建物の所有者に対して課される地方税で、道路や公園・上下水道など都市インフラ整備の財源に充てられます。

    固定資産税の標準税率が1.4%であるため、都市計画税と合わせると最大1.7%の負担です。市街化調整区域の物件と比べると、毎年の維持コストがやや高くなる点に注意が必要です。ただし、こうした税負担の背景には、市街化区域ならではのインフラ整備や公共サービスの充実があります。そのため、結果的に資産価値の維持や賃貸需要の安定につながる要素とも言えるでしょう。

    建築制限が細かく決められている

    市街化区域では、用途地域ごとに建ぺい率・容積率・高さ制限などが細かく設定されています。例えば、第一種低層住居専用地域では建物の高さが10メートルまたは12メートルまでと定められ、3階建て以上の建築はできません。さらに、日影規制や斜線制限によっては、土地を最大限に活用した建築が難しいこともあります。

    既存物件を購入する場合も、将来的な建て替えで同じ規模の建物が建てられないケースがあるため、事前確認が欠かせません。一方で、このような制限は周辺の街並みを守り、暮らしの快適さを保つために設けられたものです。

    結果的に、このような制限によって閑静な住宅街や良好な景観が維持され、資産価値の安定にもつながっています。建築制限は一見デメリットに見えますが、長期的に見れば投資家にとってプラスに働く側面もあるでしょう。


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      まとめ

      市街化区域は、都市計画法で定められた「街づくりを優先的に進めるエリア」であり、不動産投資に適した地域です。インフラが整い、資産価値が維持されやすく、賃貸需要も安定している点が大きな魅力といえます。

      都市計画税の負担や建築制限の制約はありますが、これらは良好な住環境を保つための仕組みです。そのため、長期的には投資家にとってもプラスに働く要素といえるでしょう。

      物件を選ぶ際は、その土地が市街化区域に指定されているかを最初に確認しましょう。あわせて用途地域の内容や建築制限もチェックしておくと、将来的な活用計画も立てやすくなり、安定した収益を生む不動産投資の実現が可能です。

      市街化区域に関するよくある質問(FAQ)

      Q1. 「建ぺい率」や「容積率」とは、具体的にどのような制限ですか?

      これらは、その土地にどのくらいの大きさの建物を建てられるかを決める、建築制限のルールです。建ぺい率(建蔽率)は、土地の面積に対する「建物を真上から見た広さ(建築面積)」の割合です。例えば、建ぺい率50%なら100㎡の土地に50㎡までの広さの建物が建てられます。容積率は、土地の面積に対する「建物のすべての階の床面積を合計した広さ(延床面積)」の割合です。これらは用途地域ごとに細かく定められています。

      Q2. 市街化調整区域では、本当に家を建てられないのですか?

      原則として、市街化を抑制すべき区域と定められているため、新しい住宅などの建築は厳しく制限されています。ただし、自治体の許可を得ることで例外的に建築が認められるケースもあります。例えば、その地域に昔から住んでいる親族のための家(分家住宅)や、農業従事者のための住宅などが該当します。しかし、誰でも自由に建てられるわけではなく条件は非常に厳しいため、基本的には建築が難しいエリアだと考えるべきです。

      Q3. デメリットにある「都市計画税」は、市街化区域なら必ず支払うのですか?

      はい、原則として市街化区域内に土地や家屋を所有している人が支払う税金です。この税金は、道路、公園、上下水道といったインフラ整備の財源に充てられるものです。市街化区域はインフラが整備されるというメリットがある反面、その維持・整備のための税負担が伴うことを理解しておく必要があります。なお、この税金は市街化調整区域では原則として課税されません。

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